新規事業が進まない中小企業が最初に整えるべき「体制・市場調査・数字」:卸売業の支援事例で解説
「新規事業が必要なのは分かっている。でも、会議が進まない」
「アイデアは出たのに、絞り込めない」
「数字に落ちず、投資判断ができない」
こうした悩みは、中小企業の現場で非常によく起きます。
本記事では、長い業歴を持つ卸売業(中小企業)が、既存市場の縮小を背景に新規事業に取り組む過程で、実際にどのような手順で前に進め、どこでつまずき、何を整えるべきかを整理します。
一般論ではなく、会議設計、アイデアの絞り込み、市場調査(アンケート)、数値計画の置き方まで、実務で再現できる形で解説します。
今回の支援事例の前提
卸売業が直面する「市場縮小」の現実
今回は卸売業です。既存の販路(既存市場)が右肩下がりで、従来の「卸売×既存市場」の延長線だけでは将来の維持が難しくなっていました。
そこで、新規事業を含む事業計画を作り、既存事業の減少を補う道筋を描くことが主目的になりました。
新規事業のゴール設定:売上ではなく「粗利」で捉える
新規事業の目標は、売上だけで置くと現場の解像度が上がりません。
支援では、売上目標を「粗利」に置き換えて考える視点を共有しました。
粗利で捉えると、必要な商品・サービス設計、価格、必要顧客数、販路の打ち手が具体化しやすくなります。
新規事業は「アイデア」より先に、進め方を設計する
経営と現場の目線合わせ:目的・目標・推進体制
新規事業が止まる最大の原因の一つは、経営と現場の“前提”が揃っていないことです。
最初に必要なのは、既存事業の課題、新規事業の目的、目標、そして推進体制を明文化し、共通言語にすることです。
ここが曖昧なままでは、会議のたびに議題が散り、意思決定が積み上がりません。
既存業務と新規事業のリソース配分を決める
現場は既存業務を抱えています。
新規事業が「できたらやる」になった瞬間に、進捗は止まります。
支援では、誰が、どの時間帯で、どの作業を担うのか(最低限の配分)を、経営側が先に決めることを重視しました。
ここまで決めて初めて、プロジェクトが“仕事”になります。
アイデア創出から絞り込みまでの実務プロセス
ステップ1:強み・ニーズの洗い出し(発散の土台を作る)
いきなり事業案を作ろうとすると、発想が狭くなります。
そこで最初に「自社の強み(経営資源)」と「市場のニーズ(機会)」を、細かい正確性にこだわりすぎず、発散のための素材として出し切ります。
ここは“精緻さ”より“量”が優先です。
ステップ2:短時間で大量に出す(ブレーンライティング)
発散の次は、量を稼ぎます。
会議で口頭のブレストをすると、声が大きい人に引っ張られがちです。
そこで、一定時間で多数のアイデアを捻出する手法(ブレーンライティング)を用い、短時間で数多くの候補を作ります。
重要なのは、最初から完成度を求めないことです。
ステップ3:ハイライト法で優先順位をつける(絞り込みを早くする)
アイデアが増えるほど、次に必要なのは「意思決定の省力化」です。
支援では、短時間で全体に目を通し、良案に印を付け、その数で優先度を決める手法(ハイライト法)を使い、候補を一気に絞り込みました。
これにより、“議論で疲れて決まらない”状態を避けられます。
ステップ4:検討シートで事業化の骨格を作る(10項目で見る)
絞り込んだ案は、そのまま事業計画にはなりません。
支援では、事業の目的合意性、経済性、収益性、競争優位性、市場性などを点検できる「検討シート」を用意し、仮説でもよいので埋めることで、事業化に必要な論点を一度で揃えました。
この段階で大切なのは、完璧な調査結果ではなく、次に何を調べればよいか(=不確実性の所在)を見える化することです。
つまずきがちなポイントと、立て直しの打ち手
経営の関与が弱まると、プロジェクトは失速する
新規事業では、経営が“推進者”であることが重要です。
現場の主体性を引き出すのは大切ですが、経営がオブザーブに回り、関与が薄くなると、意思決定が遅れ、現場も「どこまでやってよいか」が分からなくなります。
結果として、会議は開催されても前に進まない状態が起きます。
受け身文化を「自発型」に変える3つの仕掛け
既存事業でうまく回っていた会社ほど、意思決定がトップダウンで、現場は与えられた業務を正確に回す文化になりやすいものです。
新規事業では逆に、自発的な仮説検証が必要になります。
そこで、次の3点をセットで整える必要があります。
- 事業開発に必要な知識を、短期間で補う(学習機会の設計)
- 経営陣が積極的に関与し、判断と優先順位を示す(関与の設計)
- 挑戦した行動を評価する(評価の設計)
評価制度が曖昧だと、挑戦が起きない
リスクの高い新規事業では、成果が出るまで時間がかかります。
にもかかわらず評価が曖昧だと、現場は“失敗しない行動”を選び、結果として前に進まなくなります。最低限、「挑戦した行動」「検証した事実」「学びの共有」を評価対象に含めるだけでも、動きは変わります。
市場調査(アンケート)で“やる/やめる”を決める
メーカー側に確認すべき質問(例)
- 現状、その業務を実施しているか(内製/外注)
- 外注している場合の費用感(単価・発注頻度)
- 販促物の仕様のばらつき(販売先ごとの要件差)
- 返品・滞留在庫の扱い(処分/再販/他)
- 商品点数・新商品数(SKUの規模感)
- 販促担当部門の有無(意思決定者の所在)
小売側に確認すべき質問(例)
- 必要とする商品情報・画像・動画の仕様
- 納品・入出荷・在庫管理で困っている点
- 外部委託の有無と費用感
- 返品の頻度と処理フロー
調査結果を価格・優先順位・提案方法に反映する
アンケートの目的は“情報収集”ではありません。
「優先順位」「価格帯」「提案方法」を決めるためです。
たとえば、単価・頻度・工数の目安が取れるだけで、採算の見込みと投資判断の難易度が一気に下がります。
逆に、ここが曖昧だと、良さそうな案でも実行計画に落ちません。
数値計画と投資検討の最小セット
売上目標を粗利に置き換える意味
売上は“規模”ですが、粗利は“稼ぐ力”です。
粗利で目標を置くと、価格設計、原価・外注費、必要顧客数、必要工数が具体化し、社内の会話が現実的になります。
投資が決められない原因は「計画の粒度」にある
投資判断ができない会社は、意思がないのではなく、収益計画の粒度が粗いことが多いです。
最低限、提供メニュー、価格、月次の販売数(または稼働数)の仮置きを作るだけで、投資上限(どこまでなら回収できるか)が見え始めます。
補助金は“リスク低減”だが、依存しない
補助金・助成金は、試行錯誤のリスクを下げる手段になり得ます。
ただし、補助金ありきの事業計画にすると、市場から評価されないモデルになりやすい点には注意が必要です。
あくまで「やるべき事業の実行速度を上げるため」に位置づけます。
まとめ:新規事業を進める会社が、最初にやるべきこと
新規事業は、アイデアの勝負に見えて、実際は「進め方の設計」で勝負が決まります。
特に中小企業では、次の3点を先に整えるだけで、失速リスクが大きく下がります。
- 体制:経営と現場の目線合わせ、意思決定、リソース配分
- 市場調査:アンケートで“やる/やめる”と価格の目安を取る
- 数字:売上ではなく粗利で目標を置き、投資判断の前提を作る
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「会議が進まない」
「アイデアはあるが絞れない」
「数字に落ちず投資判断ができない」
──この状態を抜けるには、御社の前提条件に合わせて“優先順位”を設計する必要があります。
初回は、現状ヒアリング→課題の交通整理→次の一手(会議設計・アンケート設計・数値計画の置き方)までを整理します。
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