「最近、職場の空気が重い気がする…」
「社員のモチベーションが見えづらくなってきた」
そう感じる瞬間はありませんか?
職場の雰囲気は、業績や離職率に直結する見えない資産です。
でも、「制度を変えるのは難しいし、そもそも何をすればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リーダーが今すぐ実践できる「職場の空気を変える5つの習慣」を、組織心理学や実際の書籍知見をもとに解説します。
「空気が変わると、自然に人が動き出す」その感覚を、ぜひあなたの職場で体験してください。

はじめに:職場の雰囲気が会社の命運を分ける
「なんとなく、うちの職場って冷めてるよな……」
「誰も本音を言わないし、笑顔も少ない。これでいいんだろうか?」
このような“違和感”を抱えながらも、日々の業務に忙殺され、改善に手を付けられずにいる中小企業の経営者や責任者の方は多いのではないでしょうか。実際、「職場の雰囲気が悪い」と感じた社員の退職意向は統計的にも高く、近年話題の“静かな退職(Quiet Quitting)”のように、表面上は問題なく見えても内側で深刻な「やる気の損失」が進行している場合があります。
この「雰囲気」の正体とは一体何でしょうか?そして、それはどうすれば変えられるのでしょうか?
この問いに答えてくれる一冊が、『チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ』です。本書では、職場の雰囲気が悪くなる原因として、「チーム内の熱量差」、つまりやる気のギャップが放置されていることを指摘します。そして驚くべきは、それを生み出しているのは「部下」ではなく「リーダー自身のたるみ」だというのです。
つまり、雰囲気を変える鍵は、制度でも設備でもなく、“人間の行動”にあるということ。「なんとなく空気が悪い」を構造的に分析し、改善に導くためには、まずリーダーが自らの態度・関わり方を見直す必要があるのです。
このブログでは、リーダーシップ論や組織心理学、人事制度に関する最新知見をもとに、「雰囲気がいい職場」に共通する5つの習慣を紐解いていきます。
なぜなら、職場の空気は「自然には良くならない」からです。むしろ、放っておけば悪化するのが組織の常。だからこそ、意図的な介入が求められます。
「うちも、何かが変わるかもしれない」
そう感じていただけたら、まずはこの記事の続きを読んでみてください。

雰囲気を左右する「熱量差」とは何か?
「頑張っている人が一部にいて、その他のメンバーは傍観しているように見える……」
「言われたことはやるけど、それ以上の動きはしない人が増えた……」
職場でこうした現象が起きるとき、実は根底に「熱量差」という見えにくいギャップが存在しています。これは『チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ』で繰り返し述べられている核心的な概念です。著者は「熱量差を放置することこそ、チーム崩壊の始まりだ」と警鐘を鳴らしています。
なぜこの「熱量差」が生まれるのでしょうか?
一因は、リーダーが無意識に「現状維持」を選んでしまっていることにあります。リモートワークの導入や、働き方の多様化により、個人のスタンスがバラバラになった現代、チームには“遠心力”が働きやすくなっています。そこでリーダーが熱量を観察せず、「まあ、なんとなく回っているし」と見て見ぬふりをすれば、やがて雰囲気は冷え込み、主体性を失ったチームへと変質していきます。
これは「静かな退職」にも通じる問題です。最低限の業務をこなすが、会社のビジョンや価値には関心を持たず、無関心な空気を周囲にも伝染させてしまう。この無自覚な無気力は、「雰囲気の悪さ」として職場全体を覆っていきます。
では、リーダーが取るべき第一歩は何か。
それは「熱量に敏感になる」ことです。熱量の高い人に偏った評価や期待をしすぎず、低く見える人にも何かしらの“関わる理由”や“背景”があると想定する。そして、チームの中にある“温度差”を観察し、対話を始めることが、雰囲気を変える最初の一歩となります。
リーダーとは、チーム内の「熱の流れ」をつくる役割を担っているのです。
「自分の熱は、周りにどう伝わっているだろう?」
そう自問するところから、職場の空気は変わり始めます。
「静かな退職」を生まないために必要な視点
「最近の若い社員は出世に興味がない」
「やる気が感じられないし、最低限のことしかやらない」
そう感じている経営者や管理職の方は少なくないでしょう。
その背景にあるのが、「静かな退職(Quiet Quitting)」という新しい働き方です。これは、会社を辞めるわけではなく、昇進や過剰な貢献を望まず、あくまで契約上の業務を淡々とこなすスタイルのことを指します。
「でも、そんなスタンスでは組織の活力が下がるのでは?」
「もっと前向きに動いてほしい」
という心の声も当然でしょう。
ここで重要なのは、「静かな退職」を単なる“怠慢”や“やる気のなさ”と短絡的に捉えないことです。本質は、「会社と個人の関係性が希薄になっていること」にあります。
たとえば、ある調査では「将来管理職になりたくない」と答えた若手が男性で56%、女性では82%に達しているというデータもあります。なぜでしょうか?それは、会社に対して“自己実現の場”としての期待を持てなくなっているからです。
このような状態を放置すれば、職場の雰囲気はますます冷え込みます。そして、熱量のある人材も次第に離れていくでしょう。
では、経営者やリーダーはどう対処すべきか?
答えは、「会社の意味を再構築すること」にあります。
『理念経営2.0』の著者、佐宗邦威氏は「社員がやる気を失うのは、売上目標しか語らない組織に意味を感じられないから」と指摘します。企業理念が単なるスローガンで終わっている組織では、社員が日々の業務と自分の人生をつなげられず、結果的に“静かな退職”へと向かってしまうのです。
組織にとって重要なのは、「何をするか」以上に「なぜするのか」。
つまり、“目的(パーパス)”を明確にし、社員一人ひとりが自分の仕事の価値を実感できる状態をつくることです。
社員に「この会社で働く意味がある」と思ってもらえるかどうか。
それが、雰囲気の良し悪しを大きく左右する決定的な要素なのです。

「行動」を変える仕掛け:組織行動科学の視点から
「雰囲気を良くしたい」と願うリーダーがよく直面する壁があります。
それは、「想いはあるのに、行動が変わらない」という現実です。
このジレンマに対して、組織行動科学の視点はとても有効です。『人と組織の行動科学』(伊達洋駆)では、職場の雰囲気を左右する要素として、以下のようなキーワードが挙げられています。
- 心理的安全性(意見を言っても否定されないという感覚)
- 本音で話せる対話の頻度
- 組織内での「承認」の質と頻度
- 明確な期待値の共有
では、どのように行動変容を促せばよいのでしょうか?
その第一歩は、「上司が日常的に声をかけること」です。とてもシンプルですが、「今日どうだった?」「最近何か困ってる?」といった一言が、部下の行動を大きく変えます。これは「非公式な評価」として、個人の存在が認められているという安心感につながるからです。
また、職場において「仕事の意味づけ」を強化することも重要です。どんなに小さな作業でも、「それが誰の役に立っているのか」「なぜ必要なのか」を意識づけることで、行動に自発性が生まれます。
さらに、「正解を示さない会話」も行動変容の鍵となります。つまり、上司が指示や答えを与えるのではなく、「あなたはどう思う?」「もし自由に決められるとしたら?」といった問いを投げかけるのです。
この問いかけが、社員に“考える責任”と“自分の意志”を生み出します。
そして、それが結果として「自律的に動く人」を育て、職場の雰囲気をポジティブに変えていくのです。
「行動が変わると、雰囲気も変わる」
これは組織開発における鉄則です。
雰囲気を変えたければ、仕組みよりも先に、“毎日の接点”から変えてみる。
リーダーの関わり方一つで、空気は見違えるように動き出します。
雰囲気がいい職場に共通する5つの習慣とは?
職場の雰囲気を劇的に変えたい──。
そのためにまず取り入れてほしいのが、「日常の中で継続できる習慣」です。
ここでは、先に紹介した理論や事例を踏まえ、雰囲気が良い職場に共通する5つの習慣を紹介します。
1. 「ありがとう」を毎日言葉にする
心理的安全性の高い職場は、承認の頻度が高いことがわかっています。
「手伝ってくれて助かったよ」「資料の説明がわかりやすかった」など、小さな「ありがとう」が空気を温かく保ちます。言葉にしなければ伝わらない。それを習慣にしている職場は、離職率が低く、エンゲージメントも高い傾向にあります。
2. 上司が「雑談の時間」を意図的に持つ
『謙虚なリーダーシップ』(エドガー・H・シャイン)では、レベル2の関係──つまり「仕事以上の信頼関係」が生まれると、組織は自律的に動き出すと述べています。
この信頼は、業務連絡ではなく「どう?最近元気?」といった会話から育まれるもの。毎週5分でも構いません。リーダーが「聴く側」になる時間を持つことが、関係の質を変えていきます。
3. 「なぜそれをするのか?」を共有する
『理念経営2.0』では、社員がやる気を失う背景に「目的が不明確」という問題があると指摘しています。
業務の指示だけでなく、「このプロジェクトは、○○の課題を解決するためにある」「この仕事が社会に与える価値はこうだ」と目的まで共有することで、社員の内発的動機が引き出されます。
4. 挨拶を“行動のスイッチ”に使う
「おはようございます」や「お疲れ様です」などの挨拶は、ただの礼儀ではありません。これをきっかけに視線を合わせ、微笑み、声をかけることで、“今日はいい一日になりそうだ”という感覚が職場に広がります。
静かな職場ほど、こうした「温度ある接点」を意図的につくることが求められます。
5. ミスを咎めず「学びに変える」文化
ミスを恐れる職場では、挑戦も提案も生まれません。『なぜ人と組織は変われないのか』では、変化を阻む最大の壁は「安心の欠如」だと説かれています。
「この失敗から何を学べるか」を一緒に考える姿勢が、挑戦を促し、やがてポジティブな雰囲気を醸成していきます。
これら5つは、いずれも“高コスト”ではありません。
しかし、習慣として定着させれば、確実に空気は変わります。
「雰囲気のいい職場」には、特別な才能も高額な制度もいりません。
必要なのは、ほんの少しの“意図”と、“継続”だけなのです。

【まとめ】空気を変えるのは、制度ではなく「人のあり方」
ここまで、「職場の雰囲気を変える」ためのヒントを、人事組織開発や組織心理の観点から紐解いてきました。
「うちの社員は静かに辞めていってしまう」
「何かを変えたいが、何から手をつけていいかわからない」
そう悩む中小企業の経営者やマネージャーにとって、この記事が少しでも新たな視点を提供できていたら幸いです。
雰囲気の悪さは、目に見えづらいものです。
しかし、社員の目の輝きが失われ、会話が減り、提案が出なくなったとき、それは「危機の兆候」であると考えるべきです。
本記事では以下のポイントをお伝えしました。
- 雰囲気の悪さの正体は「チーム内の熱量差」である
- 「静かな退職」は個人の問題ではなく、組織の意味喪失が原因である
- 行動を変えるには、上司の関わり方が鍵であり、承認・目的の共有・対話が効果的である
- 習慣を変えれば、空気は確実に変わる。ありがとう・挨拶・雑談・目的・失敗に対する姿勢が重要。
最後に、リーダーのあなたに一つ問いかけさせてください。
「あなた自身が、職場にどんな空気をもたらしていますか?」
これは責める問いではありません。むしろ、“職場の空気を変える力は、あなたの中にある”という可能性の問いです。
雰囲気を変えるのは、才能でも制度でもなく、「小さな行動の積み重ね」です。
あなたの関わり方一つで、チームが動き出し、成果と幸福が自然に生まれる。
それが、今求められる“組織づくり”のあり方ではないでしょうか。