赤字でも融資OK!日本政策金融公庫『危機対応後経営安定資金』の活用法

「コロナ融資の返済が重い…でも、赤字だともうどこからも借りられないのでは?」

こうした不安を抱える中小企業の経営者の方は多いのではないでしょうか。

経済の回復が進む一方で、コロナ禍で受けた融資の返済が始まり、資金繰りに悩む企業が急増しています。そんな中、2025年2月から日本政策金融公庫が新たにスタートした「危機対応後経営安定資金」は、赤字決算の企業でも運転資金の調達ができる、画期的な制度です。

危機対応後経営安定資金(セーフティネット貸付) 日本政策金融公庫

今回はその制度の内容や利用条件、実際の活用方法について分かりやすく解説していきます。

「危機対応後経営安定資金」とは?

「危機対応後経営安定資金」は、日本政策金融公庫が2025年2月に開始した融資制度です。

この制度の大きな特徴は、直近の決算が赤字であっても融資が受けられる点にあります。

制度の主な概要は以下の通りです:

内容詳細
融資限度額最大7,200万円
利率公庫の基準利率(変動あり)
返済期間最長20年(うち据置最大2年)
用途運転資金、既存債務の借換えなど

特に「据置期間(すえおききかん)」とは、元金の返済を始めるまでの猶予期間のことで、最大2年間は利息のみの支払いで済むため、当面の資金繰りに大きな余裕を持たせることができます。

利用できる事業者の条件

この融資制度を利用できるのは、過去の災害や感染症の影響で借入金の返済負担が重くなっている事業者です。具体的には、以下のいずれかの制度を利用している企業が対象になります。

  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付
  • 挑戦支援資本強化特別貸付
  • 衛生環境激変特別貸付
  • 旧・危機対応後経営安定資金

これらの融資をまだ返済中であり、かつ業績の回復が中長期的に見込まれることが条件となります。「中長期的な回復見込み」とは、例えば売上回復の兆しがあったり、新しい取引先ができているなど、将来の見通しを数値で説明できる状態のことを指します。

債務負担が重いとは?~指標「債務償還年数」の意味~

「危機対応後経営安定資金」を利用するためには、「債務負担が重い」という状態を数字で示す必要があります。その判断基準として使われるのが「債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)」です。

これは、借金を利益で返すのに何年かかるかを示す数字です。

計算式は少し複雑ですが、以下のようになります:

債務償還年数 = 全負債 ÷(経常利益×1/2 + 減価償却費)

ここでいう「経常利益(けいじょうりえき)」とは、会社が本業でどれくらい儲かったかを表す数字で、赤字だとマイナスになります。「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」は、設備や車両など高額な資産を使った分だけ、費用として分割して計上するものです。

この債務償還年数が13年以上であれば、「債務負担が重い」と認められ、制度の利用対象となります。赤字の場合は経常利益がマイナスになるため、多くの企業がこの条件を満たしやすくなります。ただし、他の細かい条件もあるため、詳細は公庫や専門家に確認が必要です。

コロナ融資の借り換えだけじゃない!幅広い使い道

この制度は、「コロナ融資の返済がきついから借り換えたい」というだけでなく、通常の運転資金としても使うことができます。

例えば、

  • 売掛金の入金までのつなぎ資金
  • 賃金や家賃の支払い
  • 取引先への支払いの遅延防止
    といった日常的な資金繰りにも使えるのです。

さらに、既存の融資を借り換えることで、返済期間を延ばして毎月の支払い額を軽減することも可能です。ただし、「今後の業績が回復する見込みがあること」をしっかり説明しなければなりません。そこで重要になるのが、事業計画書の作成です。

事業計画書には、今後の売上・利益の見込み、販売戦略、新規事業の方向性などを簡潔に記載する必要があります。公庫への申し込み時に提出することで、将来性をアピールできるのです。

制度活用のための実践ステップ

実際に制度を使うには、以下のようなステップを踏むことになります:

  1. 制度の要件確認
     公庫または専門家に相談して、自社が対象になるか確認します。
  2. 書類準備
     必要な書類(決算書、借入金の一覧、資金繰り表、事業計画書など)を準備します。
  3. 日本政策金融公庫への申し込み
     インターネットまたは窓口で申し込みます。事前予約が必要な場合もあります。
  4. 面談と審査
     公庫の担当者と面談を行い、資金使途や今後の見通しについて説明します。
  5. 融資実行
     審査に通れば、指定口座に資金が振り込まれます。

資金繰りに悩む中小企業にとって、早めの相談と準備が成功のカギです。専門家のサポートを受けながら進めることで、より確実に制度を活用できるでしょう。