サイクルシェアの良し悪しと収益性(その2)

サイクルシェアは単体事業では採算がとれない仕組みとなっています。(2017年3月時点)
今後データをどう利活用するかが発展のカギになりそうです。

サイクルシェアの事業性

最近東京都内にて「自転車シェアリング」がホットな話題となっています。

街中で赤い自転車がチラホラ走っているんので見かける方も多いかと思います。

これは、2012年からNTTドコモが自治体と「社会実験」として実施している事業のようです。

前回は僕自身が実際に利用してみた感想をまとめてみましたが、

今回はこの事業自体の事業性を検証してみたいと思います。

そもそも「社会実験」とは?


「社会実験」は、国土交通省の管轄で行われます。

地域におけるにぎわいの創出、まちづくりまたは道路交通の安全の確保等に資するため、

社会的に影響を与える可能性のある道路施策の導入に先立って、

関係行政機関、地域住民等の参加のもと、

場所や期間を限定して当該施策を試行・評価し、

もって新たな施策の展開と円滑に事業を執行することを目的とするものです。

これまで行われてきたものとしては・・・

・歩行空間を拡大すること等により車優先の道路から歩行者や自転車優先の道路への再構築を図る実験

・オープンカフェ等の道路空間の多目的利用を図る実験

・パーク&ライド等を用いた公共交通機関の利用促進を図る実験

・路上や路外での荷捌き空間創出や駐車場への誘導により車両の駐車の効率化を図る実験

・通り名位置番号方式による道案内を図る実験

などが挙げられます。

(詳しくは以下のURLを参考にしてください。http://www.mlit.go.jp/road/demopro/

サイクル事業の事業性について

ではこの事業の採算性をチェックしてみましょう。

2016年4月のプレスリリースにて、

サイクルポートは140箇所、自転車台数は1,700台と示されています。

https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/notice/2016/04/14_00.html

それをふまえて考えると現時点(2017年3月)では、

サイクルポートは約280台であるため、

現時点の自転車台数は単純推計で約3,400台であると考えられます。

尚、ドコモ側で公表している利用回数の推移は以下の通りです。

このグラフから察するに、

2016年の推計は200万回利用であれば、

理論上の最高売上高は

150円(/回)×200万回 であり、

年間売上3億円が考えられます。

※もちろん実際には月額契約が多く、定額による複数回利用が考えられます。

この売上に対して、

・従業員11名の年間人件費 ※HP公表

・サイクル管理アルバイト人件費(1チーム4名、各区2チーム稼働を想定)

・サイクル管理用大型車維持費(最低12台の修繕費、ガソリン費、駐車場費を想定)

・オフィス費用

を差し引くと完全にマイナスになってしまいます。

(具体的にはこれだけで5千万以上の赤字になる試算です。)

つまり、この事業は利用料収入だけでは採算がとれない仕組みとなっています。

収益の柱について


それでは、どのように事業を継続させていくのでしょうか?

そのポイントは大きく2つあると考えられます。

まず一つ目は、東京都による大規模なバックアップです。

小池都知事の施策の下、

2020年のオリンピック、パラリンピックに向けて

会場や主要な観光地の周辺において自転車推奨ルートの設定について取り組んでいます。

自転車シェアリングはサステイナブル(持続可能)な都市づくりに欠かせないアイテムと期待を寄せていることから

今後も継続的なサポート(施策や補助金)が期待できると考えます。。

二つ目は、広告収入です。

なお、すべての自転車にはGPS機能が搭載されており、

現状では車両の管理に重きが置かれていますが、

将来的にはデータ解析を行うことで

災害時の人口流動の予測や都市開発に役立てるそうです。

いわゆるビッグデータの収集と活用を同時に図るようですね。